AIの時代に悩みを打ち明けられる場所 〜メンター3人に聞く、相談者に寄り添う言葉

「TOKYO メンターカフェ」の相談コーナーを支えているのは、一般公募で選ばれた「都民メンター」の方々。仕事や人間関係、子育て、介護など、さまざまな悩みが寄せられるなか、約70名のメンターは画面越しで相談者の方々に向き合い、真摯に回答を紡いでいます。今回はそのうちの3名に、相談者への向き合い方や回答で心がけていること、このAI の時代に悩む人たちへどう寄り添うかなどを語っていただきました。

座談会に参加したメンターの方たち

のの さん(30代・女性)
https://www.mentor-cafe.metro.tokyo.lg.jp/mentor?id=3144

しかのこ さん(40代・女性)
https://www.mentor-cafe.metro.tokyo.lg.jp/mentor?id=5520

めぐ先生 さん(50代・女性)
https://www.mentor-cafe.metro.tokyo.lg.jp/mentor?id=5431

誰かの悩みと向き合い、サポートしたいという気持ち

メンターになったきっかけを教えてください。

ののさん:看護師という仕事柄、患者さんやご家族の方のお悩みや相談を聞くことは多かったですね。メンターになったきっかけはコロナ禍で、人と接する機会が減ってつながりが欲しいと考えたからでした。ちょうどこの頃、自分と向き合う時間が増えたため、心理学を学んで民間のカウンセラー資格を取得したのも理由のひとつです。勉強したとはいえ、実践できるのか不安に感じているところはありましたが、メンターは一個人のアドバイスという立ち位置だったので、まずはやってみるしかないと思いました。

しかのこさん:普段は企業で勤務していますが、セラピストとしても活動しているため、お悩みを聞いたり、カウンセリングを行ったりする機会は多かったんです。そんななかで、セラピスト仲間の友人からメンター募集のことを聞いたのが応募のきっかけでした。事前の講習で「自分の余裕があるときに活動していただければよい」とうかがったので、それなら大丈夫かなと。

めぐ先生さん:美容の経営を30年間行いながら、女性のライフステージに合わせた相談にも対応しています。そのひとつが、がん患者さんの美容にまつわるお悩みにお答えすることですが、相談の場所がなかなかなく、探しているうちにTOKYOメンターカフェにたどり着きました。私自身もいろいろなことで悩んできたので、「これまでの経験からできることがあれば」とメンターに応募。自分ができるささやかなことで、どなたかの役に立てたらうれしいという前向きな思いでしたね。

大切なのは、考え方の選択肢を増やすこと

相談者の悩みに回答するとき、工夫していることはありますか?

ののさん:私は自分が経験してきた内容に答えるようにしています。どんなお悩みでも、ネガティブになりやすい夜に回答するのは避けるようにしています。相談を読むのも、自分が心身ともに整っているとき。皆さん、きっとずいぶん悩みながら相談先を探して訪れた場所だと思うので、回答にはその気持ちを受け止める言葉を添えるようにもしています。はっきり「こうすればいい」とは発言せず、「私の場合ならこうしていました」と伝えることも大切。それを参考にすることで、相談者さんの考え方の引き出しが増えればいいなって。

しかのこさん:私も悩みごとを別の視点から見られるように、「こういう方法もありますよ」という言い方をしています。また、最初に「来てくれてありがとう」という気持ちを伝えています。相談者の方々が自分の気持ちをつづるには、それなりの時間と勇気が必要だと思うので。そのほか、「泣かないで」ではなく、「笑えるといいですね」といった形で、できるだけ否定形を使わないようにもしています。
寄せられた相談を見て思うのは、身近な方との人間関係のお悩みが多いこと。文面からやさしさや真面目さが伝わるので、そういう方ほど抱え込み過ぎちゃうのかもしれません。私の場合、回答がしばらくない相談には優先的に返事することを心がけています。回答が全くないと相談者の方も不安になると思うので、反応することで「見ているよ」と伝えたくて。

めぐ先生さん:いろいろなことをきちんと捉える繊細さがあるから、悩みも深くなるかも。そんな繊細な心に寄り添うには、その方が何を求めているのかを想像し、適切な言葉で伝えていくことが大切だと思います。言葉にはパワーがありますから。私は、メンターを始めた時からの自分との約束で、ほぼ毎日1~2本答えようと決めています。みなさんが笑顔になれたら、という思いがあるからです。

AI時代における、メンターの存在意義

生活にAIが浸透している昨今、TOKYOメンターカフェで相談することにはどのようなメリットがあると思いますか?

ののさん:私も時々、AIにお悩み相談をしますが、自分で決めて進まないといけないときは、やっぱり同じ経験をした人にアドバイスを求めたくなります。気持ちを打ち明けた先に生身の人間がいると感じることは、孤独感の解消につながるのではないでしょうか。
メンターをしていて、友だちづくりに悩む中学生から相談があった時は、家族や友人ではなく、ネットで答えを求める時代なんだ、と感じました。回答後には、「無理に話さずに、自分のペースで友だちをつくっていこうと思う」との返信をいただきました。こういう前向きな気持ちが聞けると役に立てたようでうれしくなりますね。

しかのこさん:自分の経験を共有するのも、人同士だからこそできることですよね。私は、初めて回答した相談が一番印象に残っています。友人を自死で亡くされた方から、「そういう方に寄り添うような仕事をしていいのか、別の仕事を選ぶべきか進路に迷っている」という内容でした。自分も身近な人をそういった形で亡くした経験があり、返信するまで何度も読み返しましたし、「この回答がみんなに見られる場に載る」という責任も感じました。AIは、いわゆる「最適解」を出すことが多いように思います。そうなると、意外性のある回答は少なくなるのかなって。

めぐ先生さん: AIはありがたいことに心地いい答えをくれますが、人間の場合はそれぞれの経験や関係性によって答えも変わります。人とのつながりをリアルな経験者の温かい言葉に載せれば、AIとは違うものを伝えられるのでは? 自分の心の内を匿名で明かせるTOKYOメンターカフェのような場所は、これからの時代、もっと必要になるかもしれません。私自身、若者がもっと未来に希望をもてるように、次世代をサポートしていきたいと思っています。

ひと言でもいいので、安心して気軽にご相談を

最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。

ののさん:メンターは皆、お悩みに返信するために日々、向上心をもって取り組んでいると感じています。私は子どもが不登校になり、自分が適応障害のため仕事に行けなかった時期がありました。その時すごく安心できたのが、否定やアドバイスをせず、ただ話を聞いてくれる人でした。同じように私も、相談者の方にとって安心できる人でありたいと思います。親身になって話を聞きますので、まずは気軽に相談していただきたいですね。

しかのこさん:この記事を読んで、ちょっとでも気になったら一度、サイトに遊びに来て欲しいですね。自分と似たようなお悩みを見ることで、気持ちが軽くなることもあると思います。もし、「投稿したいけれど、文章にまとめるのが難しい」と思っても、感じていることを書いてもらえば大丈夫です。今後は、相談者の方がちょっとほっこりするような、そんなユーモアを少し交えた回答ができるようになりたいと思っています。

めぐ先生さん:堅苦しい言葉を使う必要もないですし、本当にひと言でも構いません。相談の投稿は匿名でできますので安心してくださいね。相談する勇気がもてない方も、TOKYOメンターカフェで自分に近い悩みを読んで共感したり、メンターの励ましの言葉を自分ごとにできたりしたらいいなと思います。