新たな視点やアイデア~豊かな選択肢から、自分で選び取るということ~

はじめに

悩みを抱えて一人で考えている時、私たちは同じ思考をグルグルと巡らせてしまうことがあります。「こうするしかない」「でもそれはできない」などと堂々巡りを繰り返し、出口が見えなくなってしまう。そんな経験をお持ちの方は少なくないでしょう。

ところが、誰かに相談すると、思いもよらない展開が生まれることがあります。それは、「選択肢が広がる」といった経験です。今回は、相談することで得られる大きなメリットの一つである「新しい視点との出会い」について考えてみましょう。

予想外の視点との出会い

相談することで、私たちは全く予想していなかったアイデアや発想に出会うことがあります。

例えば、子育ての悩みを先輩ママや先輩パパに相談して、「うちは〇〇という商品を使ったら楽になったよ」と今まで知らなかった情報を教えてもらう場面。あるいは、職場の人間関係で悩んでいた時に「そういう時は距離を置いて仕事に打ち込んでみるといいよ」と、意外な処世術を授かったりする場面。

こうした「そんな方法もあるんだ!」という驚きは、自分一人では到達できなかった考え方に気づかせてくれます。視野が広がり、可能性が増大します。

この時重要なのは、相談相手から示されたアドバイスや提案の全てを聞き入れる必要はないという点です。

相談相手がどんなに経験豊富な方だとしても、あるいは、どんなに親身になって考えてくれたとしても、その人はあなたではありません。置かれている状況も、これまで歩んできた道も、大切にしている価値観も、完全に同じということはありえません。

ですから、その中から自分にとって有益なアイデアだけを受け取り、ピンとこないものは聞き流せばよいのです。

「それは私には合わないな」と思うアドバイスがあっても、何も問題はないですし、むしろ、自然なことです。相談相手はあくまで他人なのですから。

大切なのは、相談してアイデアがもらえることで選択肢が増えるということです。その豊かになった選択肢の中から、視野を広げた上で最終的に自分自身で決断できることに、非常に大きな価値があります。

相談を重ねると考える力が育まれる

選択肢が増えて自分で選べるようになる。これだけでも相談には大きな価値がありますが、相談を繰り返すことには、実はさらに深い意味があります。

まず前提として、自分で選択できるようになるには、心の中にある程度「選択するための材料」が備わっていることが必要です。

人との対話は、そのための材料を得る格好の機会となります。さらに、他者との対話の経験が蓄積されると、他人のものの見方が次第に自分自身の心の中にも根付いていきます。

最初は、相談相手から「こういう見方もあるよ」と教えてもらわなければ気づけなかったことが、何度か似たような経験を重ねるうちに、「そういえば、あの時あの人はこう言っていたな」と思い出せるようになります。やがて、実際に相談しなくても、「この状況をあの人が言っていた角度から見たらどうだろう?」と自分一人で考えられるようになっていきます。

これは少し専門的な言い方をすると、他者の視点が「内在化」されていく過程と言えます。

私も日頃、「こういう時、Aさんなら〇〇と感じるんだろうなぁ」、「もしB先生が見たら、『堀川さんらしいですね』と言われそうだなぁ」と想像することがあります。私の心の中にAさんやB先生が住んでいるということです。そして私はその場にはいないAさんやB先生と心の中で対話をしているのです。

おわりに

相談を通じて、私たちは一人では気付けなかった新しい視点やアイデアに出会うことができます。その豊かな選択肢の中から、自分に合ったものを自分で選ぶ。さらに、そうした経験を重ねることで、相談相手の視点が少しずつ自分の心の中に根付き、やがて一人でいる時でも多角的に考え、決められる力が育っていきます。

相談とは、その場で答えや解決策を得るだけのものではありません。他者の視点を取り入れ、自分自身の決断する力や考える力を豊かにしていく営みでもあるのです。

最終回の次回は、人間同士の相談ならではの、少し意外な側面についてです。人間が時に間違えたり、失敗したりする存在であることに注目し、AIとの違いなども意識しながらお話ししたいと思います。